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2024.08.26
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2024.06.14
ブログ
こんにちは。いよいよ梅雨が近くなり、ゲリラ豪雨災害が心配される季節になりました。
さて、今回は「古民家」と「現代住宅」の違いについてお話しいたします。
まず「古民家」は、大工棟梁達が長い歴史の中で学び、知恵と技術の伝承に基づいて造ってきた、社寺仏閣に代表される「伝統構法」であり、また「現代住宅」は、戦後の建築基準法に基づいて造ってきた「在来軸組工法」です。
一番大きな違いは、地震対策(地震発生時の倒壊に対する安全対策)の根本的な考え方(造り方)の違いです。つまり、「古民家(伝統構法)」は、所謂「免震構造(柔構造)」であり、「現代住宅(在来軸組工法)」は、所謂「耐震構造(剛構造)」で、全く真逆の発想(感性)で造られています。
わかり易く言えば、読んで字のごとくで、【免震構造(柔構造)】は、地震から受けるエネルギー(力)を建物がまともに受けない(抵抗しにくい)ように、出来るだけ固めないように柔らかくしなやかに動く(移動する・変形する・エネルギーを逃がす)ように造った方がより安全であるという考え方(日本的発想・文化)に対し、【耐震構造(剛構造)】は、いやいやそうじゃなくて、地震エネルギーをまともに受けてもそれに耐えられる(壊れない・変形しない)ように、金物や耐力壁(すじかい・耐力合板)を使ってガチガチに固く剛く動かないように造った方がより安全じゃないか?という理論(西洋的発想・文化)です。
そして、この【免震構造(柔構造)】を可能にした大きな要素(キーワード)として、「総持ち」「貫構造」「真壁造り」「土壁」などがあり、更には「木のめり込み力」を活かし「込み栓」「ダボ栓」「車知栓」「くさび」などを巧みに利用した「高度な仕口加工(木組み技術)」や「石場建て構法」などもその安全性の裏付けになっています。
また、【耐震構造(剛構造)】を可能にしている大きな要素(キーワード)としては、「筋かい」「耐力壁(合板)」「構造金物」「大壁造り」などが挙げられるでしょう。
更にもう一つの大きな違いは、根本的な「家づくり思想(理念・文化)」の違いでしょう。
つまり、『古民家(伝統構法・免震構造)』の家づくりは、「自然との共生(自然の中に包まれる・融け込む)」が重要思想であり、自然光・自然風を最大限に取り入れた(利用した)「夏の涼しさ」がメインテーマです。
更には「建物の耐久性(長持ち・長寿命3世代)」が最優先の家づくりで、そのための木材を腐らせない工夫・技術として「長い軒の出」「高床」「通風」「自然素材(適材適所)」などに良く表れていると思います。
それに対して、『現代住宅(在来軸組工法・耐震構造)』の家づくりは、「自然の克服(逃れる・抵抗する)」が重要思想で、気密性・断熱性を重視した「冬の暖かさ」がメインテーマになっています。
また、個々の性能・スペック・デザインが最優先の家づくりで、個人主義(家族主義)の短寿命1世代住宅が主流となっています。
最後にもう一つ、古民家(免震構造)は、大きな地震でも壊れにくい(倒れにくい)というお話です。
古民家は、柔らかくしなやかに動く(移動できる)ように造ってあることは先に述べましたが、現代住宅(耐震構造)は「層間変位角」が 1/30 でほぼ倒壊するのに対して、古民家は「層間変位角」が 1/15以上に斜めになったままでも壊れずに何とか自力で立っているという実験データがあります。
層間変位角とは、横揺れ(エネルギー)で柱が斜めに傾いた時の、元の垂直に対して変位した足元の角度です。
一般的に柱の長さが3mとすると、1/30 は10㎝、1/15 は20㎝ということになりますので、古民家は柱の頂点が20㎝移動するくらい斜めになってもまだ倒れずに立っているということになります。
それに対して現代の耐震住宅は、10㎝程度斜めになっても破壊してしまうということになります。
ただし、現代住宅は、震度6強という最強の地震でも破壊は免れるという耐震計算に基づいて設計されていますので一般的には安全とされています。
逆に古民家は耐震計算はされていませんが、免震技術によって極めて倒れにくい建物であることは過去の歴史(データ)をみてもわかっていただけると思います。
次回は、「五重塔の不倒のしくみ」と「東京スカイツリーの技術」などについてお話ししてみたいと思います。
有難うございました。
令和6年6月14日
(一社)しまね古民家倶楽部 理事長 安達盛二
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