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2025.03.08
お知らせ
2025.02.14
ブログ
皆さんこんにちは。
今回は私が日頃から感じている「職人魂(気質)」についてのお話しをさせていただきます。
先日、録画してそのままになっていて、気になっていた録画を2本続けて視聴しました。私の大好きな『プロジェクトX』です。
1本目は『昭和の姫路城解体復元工事』、2本目は同じく『平成の姫路城屋根修復工事』、つまり「大工さん」と「左官さん」の感動ドラマです。
国宝・重文級の日本を代表する木造建築の感動の物語と言えば、やっぱり「大工さん・左官さん」に代表される「職人魂の物語」ですよね。
この人達の職人魂が、世界に冠たる木造建築を編み出し、その技術(匠の技)と心(叡智)を継承し、現代に生きる私達に素晴らしい感動を与えていただいているんだと、心から感謝をし感動をしながら拝聴させていただきました。
まず1本目は、「昭和の解体復元工事」です。
ここで、ほとんどの時間を費やしていた一番の見せ場は、私がこれまでに五重塔でいろいろとお話ししてきました『心柱』の調達のご苦労についてでした。
姫路城には、中央に長さ25mの大きな2本の心柱(桧の大黒柱)が、威風堂々と並んで立ち、まさにあの国宝姫路城を泰然と支えているんですね。(ここで言う「姫路城の心柱」は、「五重塔の心柱」とは組み方も役割も全く違い、文字通り「大黒柱」としての役目ですが・・)まさに感動ものです。
一口に「25mの桧柱」と言っても、担当された大工棟梁や関係者が「これなら良し‼」と心から納得し誇れるような、日本一の姫路城の心柱に相応しい「姿・形・太さ・長さ」が全て揃った逸材は、現代では日本中なかなかどこにも無いらしく、その調達のご苦労が詳細に語られていました。
山深く歩いて探し回って「これだ‼」とやっと見つけたと思っても、細かく調べたら、少し曲がっていたり、少し長さや太さが足りなかったり・・と、また、奥山からの運搬途中の最終場面で落下事故で折れてしまったり・・と。
工事現場では、この2本の心柱の調達が出来ないと骨組みそのものが前に進めず、時間との戦いもあり、いよいよ困り果て疲れ果てて万策尽きたと思ったその時に、まさに熟練棟梁達の叡智が働き、長い歴史の継承で先輩達から授かった伝統技術を使い、「1本で長さが足らなければ継いで1本にすれば出来るじゃないか・??」と閃き、伝統の高等技術の「継ぎ手」加工を施し、ものの見事に2本の心柱が誕生し、中央に誇らしげに聳え立った時の棟梁・関係者の誇らしい満足顔が目に焼き付いています。
そばに寄ってその感激に共に涙しながら拍手喝采したい気持ちで見せていただきました。
そして、その後の言い尽くせないほどの試練も無事に乗り越えて、国宝姫路城(白鷺城)は堂々と甦りました。
大工棟梁として日本一の白鷺城を甦らせるんだという大きな使命感と熱意こそが、最後まで決して諦めない「職人魂」そのものであり、その叡智と技術のお陰様でこの大仕事がなされたのです。本当にお疲れさまでした。有難うございました。
そして2本目は、「平成の屋根修復工事」です。これも職人魂に感激しながら拝見しました。
昭和の大工事から45年が経ち、長年の風雨にさらされ、あちこちの屋根がほころび雨漏りも酷くなり、大々的に屋根を修復しないともたないと、国が動きだして蘇らせた物語でした。
この工事のご苦労と達成の感動の焦点は、「屋根瓦一枚一枚」の繋ぎに施された「白漆喰のこて技術」でした。
それは、姫路城特有の漆喰塗り秘伝技法『灰頭(はいがしら)』という雨水をはじき出す高等技術で、私が感動したのは、選ばれた左官会社にはその「灰頭」の技術を持った左官職人はいなく、そこから一人のリーダーが苦労して寝る間も惜しんで練習してもなかなか叶わず困り果て悩んだ末に、その技術を完全に習得している他社の左官職人に対して、熟練職人としての自分のプライドも職人魂も投げ打って、その年下の若い左官の下に足を運び、頭を下げ強くお願いをし、いろいろな辛い経過を踏みながら、最後には、その秘伝技法を習得した他社の高等左官さんに自分の現場に出向いてもらい、実地で手取り足取り指導を仰ぎ、結果的に今我々が見上げる「白鷺城」の美しい姿を見事に蘇らせ完成させたのです。
そしてもっと驚くのは、これだけの巨大プロジェクト、何十人、何百人という職人さんが、まったく初心者の段階から、この尊い指導者と1人の優秀なリーダーの熱意によって、極めて短期間の内に、全員がその秘伝技法を習得し、みんなで一緒になってやり遂げたという事実です。これもまた、まさに「職人魂」のなせる業なのではないでしょうか。
更なる感動はそのリーダーの言葉で、「自分たちは、長い間、人に語れないような辛い経験や苦労を重ねながら、今こうして一人前の職人として、プライドや職人魂だけを誇りに毎日頑張っています。職人はみんな同じです。こんなすごい秘伝を習得した人が、頼まれたからと言って、こともあろうに、他社の言わばライバル左官の私達に、自分の秘伝技術を丁寧に皆伝していただけるなんて在り得ないことです。感謝しかありません。今後あの方から仕事の依頼があれば、すべての仕事を投げ打って、部下を全員引き連れて馳せ参じます」と。
また、技術を皆伝した左官さんは、「自分が、つまらんプライドは捨てて、心から教えてあげようと思うようになったのは、あのリーダー左官さんの国宝を元のように蘇らせたいという情熱と使命感と、何よりも彼の一途な前向きさだったと思います。私も一人の職人として心が揺さぶられました。今後も素晴らしい仲間として一緒に頑張っていきたいと思います。」・・・なんてすばらしいお話しでしょう。(涙・涙‼)
本当に有難うございました。日本にもまだまだこんな素晴らしい「職人魂」を受け継いだ「本物の職人」がたくさん活躍しておられたことに感動しました。これからも、日本の価値ある木造建築を伝承していくために、そして、次代を夢見て頑張っている若い職人さんたちの指導・育成のために、どうぞ健康に留意され、しっかりとご活躍下さることを心より願ってやみません。
(一社)しまね古民家倶楽部
理事長 安 達 盛 二
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